和歌山県の天然記念物に指定されながらおよそ60年前に朽ち果てたとされていたブドウ櫨(ハゼ)の原木とみられる木が、紀美野町の山林で見つかり、原木かどうかの確認作業が進められています。

ブドウ櫨の原木と見られる木
櫨は、鬢付け油や和ろうそくの原料になる木で、ブドウ櫨は、江戸時代末期に、いまの紀美野町の山林で、他より大きな実をつける櫨の木として発見されたのが始まりで、ブドウの房のように実ることからブドウ櫨と呼ばれるようになりました。
ブドウ櫨の原木は、県内外で接ぎ木され、明治時代には、この地域を支える大きな産業となり、和歌山県の天然記念物にも指定されましたが、昭和30年代に枯れたとされ、その後、継続して指定されていませんでした。
しかし、地元の人から「昔『ブドウ櫨の原木』と書かれた看板が立っていたのを見たことがあるし、その場所には、いまもブドウ櫨が生えている」という情報を聞いた、紀美野町のりら創造芸術高校の生徒らが、今年2月から調査を始めました。

調査のため山へ入る(2017年10月13日)

原木と見られる木の前で
そして、昭和8年頃の写真と比較したり、県や紀美野町の職員らとともに現地調査を行った結果、ブドウ櫨の原木である可能性が高くなりました。

周辺の竹を切ると・・・

櫨の幹や枝がより見やすく
先月、生徒と現地を訪れ、ブドウ櫨の様子を確認した県海草振興局林務課の佐野豊(さの・ゆたか)さんは、「実も付いているし、木を維持するのは可能だと思う。原木だとすれば、ここから接ぎ木を取ることもできるので、今後、専門家にみてもらうなど、対応したい」と話していました。

幹の太さを測る佐野さん
今後は、樹齢の調査や写真鑑定のほか、DNA鑑定も交えて、見つかった櫨の木が、ブドウ櫨の原木かどうかを確認する作業が行われます。
りら創造芸術高校の鞍雄介(くら・ゆうすけ)教頭は、「もし、この木がブドウ櫨の原木だとすれば、全国でも、原木があるのは、ここだけだと思います。かつては、富(とみ)の源(みなもと)とされ、地元の人の中には、この木のお陰で大学にいけたという人もいるこのブドウ櫨を是非、後世に残したい」と話しています。

りらの鞍教頭(奥)と生徒ら
また紀美野町で村おこしに取り組む「さみどり会」のメンバーは、「最近は、和ろうそくの他にも、いろんな用途があるので、いまブドウ櫨を増やせれば、若い世代が、将来、ふるさとに帰ってくるきっかけになるかもしれない」と話し、地元を支える産業に成長させようと取り組みを始めています。