携帯電話の普及で減り続けていた公衆電話回線が、今年度(2016年度)、26年ぶりに、前の年度より増える見通しとなりました。
街中にある一般型の公衆電話が減る一方、東日本大震災や紀伊半島豪雨などを教訓に、災害時に備えて回線だけをあらかじめ引いておく「特設公衆電話」の導入が各地で進んでいるためです。
特設公衆電話は、災害が発生した時に、避難所など置かれるもので、無料でかけられ、停電の時でも使えるのが特徴です。そして、通信規制がかかる固定電話や携帯電話より優先されるため、家族の安否確認や支援を求める被災者の重要な通信手段となります。普段は使われず、災害時に、準備している電話機をつなげて使う仕組みです。5年前の紀伊半島豪雨の際にも、和歌山をはじめ、三重や奈良の各県に設置されました。
ただ、災害の規模が大きくなると、道路が不通となるなど、災害発生後の設置は難しくなります。このため、NTTでは、あらかじめ回線を引いて、いつでも使えるようにしておく方針を打ち出し、自治体などと協議を進め、東日本大震災や紀伊半島豪雨の翌年の2012年ごろから本格的に設置が広がり、昨年度は、前の年度から8千回線増えて、全国で5万回線近くになりました。今年度もNTTが順次設置を進めています。
従来の一般型公衆電話は、ピーク時の1984年度には、およそ93万5千回線が設置されていましたが、91年度以降は減り続け、昨年度にはピーク時の2割以下まで落ち込みました。今年度も採算割れの公衆電話の撤去が進み、およそ16万3千回線となる見通しですが、事前設置型の増加が、一般型の減少分を補って、公衆電話全体では、増加に転じる見込みだということです。