熊野地方に春の訪れを告げる「お燈祭(おとうまつり)」が、あす(6日)のよる、新宮市(しんぐうし)の世界遺産・神倉神社(かみくらじんじゃ)で行われます。
お燈祭は、今からおよそ2600年前、神武(じんむ)天皇が熊野を訪れた際、タカクラジノミコト(高倉下命)が松明(たいまつ)を持って道案内をしたという故事にちなんで、毎年2月6日に行われている女人禁制の神事で、腰に荒縄を巻き、燃えさかる松明を持った「上り子」(のぼりこ又はあがりこ)と呼ばれる白装束の男たちが538段の石段を駆け下ります。
あすは、夜明け前や正午ごろに、締め込み姿の敬虔(けいけん)な上り子たちが、熊野灘に面した王子ヶ浜(おうじがはま)でみそぎを行うほか、夕方になると、松明を持った上り子たちが市内を練り歩き、「頼むで」と声を掛け合いながら、世界遺産・熊野速玉大社(くまのはやたまたいしゃ)や阿須賀(あすか)神社などを参拝後、神倉神社のご神体「ゴトビキ岩」前に集まり、神職の起こした火をともします。
そして、午後8時ごろ、修験者のホラ貝を合図に山門が開かれ、燃えさかる松明を手にした上り子が、雄叫びを上げながら一気に石段を駆け下ります。
このとき、麓から神倉山(かみくらさん)を見ると、連なる炎が山を下る龍のように見えることから、民謡「新宮節」では「お燈祭は男の祭り、山は火の瀧、下り龍」と歌われ、祭が終わると、熊野地方に本格的な春が訪れると言われています。
お燈祭は、先月(1月)国の文化審議会から、同じく新宮市の「速玉祭(はやたまさい)」とともに、国の重要無形民族文化財への登録を答申されています