江戸時代に活躍した茶人で、新宮市の水野家で茶頭を務めた川上不白(かわかみ・ふはく)の生誕300年を記念する和菓子「雪月花(せつげつか)」が、このほど完成し、新宮市の和菓子店で販売が始まりました。
これは、新宮市で埋もれていた江戸時代の茶人に光をあてる事業を展開してきた和歌山大学のきのくに活性化センターが、今年(2019年)、入部400年となった水野家で茶頭(ちゃどう)職を務めていた不白の生誕300年にあわせて、ふるさとの偉人の業績を語り伝えるとともに、新宮の茶の湯文化の発展に役立てようと、茶会の席に欠かせない和菓子の開発とそれに伴う菓子木型の製作を進めてきたものです。
江戸千家宗家(そうけ)蓮華菴(れんげあん)の10世・川上不白・家元の協力を得て、初代の川上不白が自ら記した「雪月花」の草書の筆跡をもとに、全国でも数少ない和菓子の木型職人で、岡山市在住の田中一史(たなか・かずし)さんに依頼して菓子の木型が完成しました。
そして、先月(11月)24日の江戸千家の記念茶会でお披露目をかねて菓子が提供され、製作した新宮市新町の和菓子店「福田屋」での販売も始まりました。
「雪月花」は、和菓子の中でも水分の少ない干菓子(ひがし)で、短冊の形をしていて、雪は白色、月は緑色、花はピンク色です。
「雪月花」を制作した福田屋の永用利一(えいよう・としかず)さんは、「完成するまで、色や形、甘さや硬さについて何度も試し打ちをしてきましたが、特に、緑色を出すのに腐心しました。草書でかすれた繊細な文字を表現できるか、心配しましたが、木型の彫がよく、細かい線が出やすかったです。これまでで一番緊張感のある仕事でした」と振り返りました。
きのくに活性化センターの鈴木裕範(すずき・ひろのり)さんは、「新しい和菓子は、家元をはじめ、和菓子に関わる方々の、知恵と優れた技術の結晶です。菓子作りを通して、人をつなぎ、文化をつなぐことができましたが、これは、まちづくりを考える上でも、1つのヒントになるのではないかと思います」と話していました。
「雪月花」の1つの大きさは、タテ3・5センチ、ヨコ2センチ、厚さは9ミリで、福田屋の店頭で1種類が3個ずつ、あわせて9個入って900円で販売されています。