膠原病(こうげんびょう)が原因の発疹(ほっしん)など皮膚の治療に有効とされるものの、網膜症を起こす薬害が原因で日本では使用できなかった治療薬について、和歌山県立医科大学などの研究グループが行った世界で初めてとなる臨床試験が承認され、今月(9月)7日、日本で販売されました。
臨床試験を行ったのは、和歌山県立医大・皮膚科学教室の古川福実(ふるかわ・ふくみ)教授や、東京大学医学部・アレルギーリウマチ学の山本一彦(やまもと・かずひこ)教授らによる研究グループ「日本ヒドロキシクロロキン研究会」です。
膠原病が原因の発疹には、かつて、アメリカで承認された抗マラリア薬「クロロキン」が使用されていましたが、患者が網膜症を引き起こす薬害が発生しました。
のちに、クロロキンの改良薬「ヒドロキシクロロキン」が世界70カ国で承認されましたが、日本では薬害が原因で改良薬は承認されず、ステロイドの過剰使用が新たな問題となっていました。
研究会では日本での改良薬の承認を目指して世界で初めてとなる臨床試験を行い、全国22の医療機関の患者103人に52週間にわたって治験を行いました。
治験では、はじめから改良薬を投与した77人と、投与していない26人の2つのグループに分け、16週目の時点ではじめから投与したグループの7割以上の患者に症状の改善が見られたほか、投与していない残りの26人にも16週目以降に改良薬を投与したところ、症状が改善しました。また、投薬が原因とされる重大な副作用も少なく、安全性も確認できたということです。
古川教授は「薬禍を乗り越えた臨床試験で、今後の治療に大きく貢献できる」と話しています。