果樹栽培の農家で使用される、収穫かごを肩にかけるための農業生産資材を開発・販売している紀の川市の会社が、この資材の生産を障害者就労支援事業所に委託し、事業所の経営安定化をはかろうと取り組んでいます。
この取り組みは、福祉用具も取り扱う紀の川市粉河の株式会社おかい商店が行っているもので、果樹農家がみかんなどをかごに収穫する際使う「肩かけ引き」と呼ばれる商品の生産を、紀北地域の障害者就労支援事業所に委託しています。
肩への負担が少ない「肩かけ引き」は、古くから和歌山県内の農家で使われ、おかい商店も取り扱ってきましたが、製造する業者がなくなり、海外の製品も質が悪いため、肩にかける部分をフェルト生地でわらじのように編み込むなどして独自に開発し、おととし4月から販売しています。
一方で、障害者就労支援事業所は、外部から委託される仕事などで、通所している障害者の賃金を確保し、事業所を経営していますが、単価の安い仕事が多く、経営を安定させるだけの収入を確保することが、大きな課題となっています。
こうした中、おかい商店の岡井良樹(おかい・よしき)社長が、事業所の経営安定に一役買おうと、「肩かけ引き」の生産委託を事業所に呼びかけ、現在、7法人・11事業所で生産されています。
このうち、和歌山市出島の障害者就労支援事業所「ピーチ」では、2人の利用者が「肩かけ引き」づくりに取り組んでいて、おととい(10/23)、その様子が公開されました。
「ピーチ」を運営する株式会社プラムの矢野好生(やの・よしお)代表取締役は、「この仕事は、10倍から20倍の単価がもらえることもあり、3年前と比べて営業利益は80%アップしましたが、まだ赤字なので更なる戦略が必要です。新しい仕事を受けると、利用者の技術があがり、次の仕事につながります」と歓迎しています。
おかい商店の岡井社長は、「肩からかごをかけて果樹を収穫する文化を守るため福祉事業所と力を合わせて取り組むことで継続できるようになりました。今後、さまざまな商品を作ることで、福祉の業界が少しでも豊かになれば、うれしいです」と話していました。
おかい商店では、今後、県外でもPRして需要を掘り起こすとともに、商品の生産委託先をさらに増やして障害者の就労につながる取り組みを続けていくことにしています。